2012/01/05

夜の大捜査線 みてきた

正月の三が日が終わって、朝から映画に行ってきました。




夜の大捜査線 1967年の名作です。

シドニー•ポワチエ演じる刑事が
公民権運動時代の南部のど田舎町で夜中に汽車を降り立つところから始まります。
彼は母親のいる実家へ帰る途中、
列車の乗り換えのために時間があって無人の駅舎で
本を読みながら待っていたのですが
ちょうどその頃、ど田舎の町ではめったにない殺人事件の遺体が発見されます。
ぽんこつ警官は犯人捜索中に駅舎のポワチエを見つけて
黒人というだけで、また財布に大金を持っていたという事だけで
警察署へ尋問もせずに連行します。
南部の人達のもう、何の遠慮もない黒人への、ど差別。
実は彼はフィラデルフィアの殺人課のベテラン刑事であるとわかっても
2時間ドラマでの内田康夫の浅見光彦みたいに
周りの警官がぺこぺこするでなく
ひどくののしって、全くその態度を改めないのです。

この映画が公開されたのが67年で
キング牧師が暗殺されたのが68年ということを考えると
さもありなん、というよりもむしろ、
よくぞ作れた映画だと言えるでしょう。
アカデミーが作品賞を与えたのはもちろん映画の出来のよさもあるけれど
こういう政治的時代的な背景も踏まえた物でしょう。

本題に戻ると
その後、ポワチエはフィラデルフィアの上司に
田舎でよくわからないだろうから殺人事件を手伝ってやれ、と言われます。
何度も拒否するも
手伝わざるをえなくなるポワチエ。
警察官たちも町の人も誰もが黒人のポワチエの捜査には非協力的で
彼にとっては屈辱的で命すら狙われます。
その上、監察を含め警察の捜査方法はなっておらず
一々すべてを教えなければならない歯痒さとそれを疎ましがられるポワチエ。
その中、太っちょ署長だけが少しづつ彼の人としての素晴らしさを理解し始め、
しかし、それすらも根底に差別があってのことで、
誰も彼の気持ちに沿う人はいないのです。
エリートである彼は、綿花農場で働いている黒人労働者の気持ちにもなれないしわかり合えない所も描かれています。

何があったのかわからないけど
母親の元へと行こうとした時に
たまたま起こって巻き込まれてしまったこの一連の事件。
彼が何度もやめたくなったり、傷ついたりした時にいつも
後ろに汽車の汽笛がなるのです。
あのまま、何もなく母親の元へと行けていたらと思わせる汽笛です。

事件は彼のおかげで解決し、
最後に太っちょ署長とは信頼を結ぶのですが
それも淡い感じ。男同士ってそんな物かもしれませんが。
ポワチエに寄り添ってみていた私にはこの数日の彼の仕事に意味があったのかとも考えてしまいました。

クインシージョンズの音楽のすばらしさ。
この頃のいい映画の映画音楽は終わってからも頭に残りますね。

レイチャールズの in the heat of night の流れるオープニングがいかしすぎ!



opening

それにしても、
シドニー•ポワチエの凛とした姿勢のよさ。
誰よりも美しく仕立てのいいスーツを着こなし
無駄な争いをしないように全てを口にする事を諦めつつも
今の地位を確立したのであろうと思わせる静かな態度。
確かに太っちょ署長を演じたロッド・スタイガーもいいけれど
この映画でも主演男優賞をロッド・スタイガーではなくポワチエに贈れば
アカデミー賞の主張はもっと明確に伝わったのではないかと思ったのでした。

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